丸太の運び出し
2月の終わりに伐り倒した本の杉の木を運び出す。
その昔、近所のお婆ちゃんが使っていたという雪ぞりをお借りして、3人で林のなかへと入ってゆく。
水分を含んだ丸太はとてつもなく重く、ひとりでは全く歯が立たない。
3人で動かそうとしても、各自がバラバラだと全くどうにもならず、強引にいくと一瞬にして大きく体力を消耗する。
そして3人の息があったその瞬間に、合わさった力がいくべき所へと流れ、そりに乗った丸太は締まって固まった春の雪の上をなめらかに滑り出した。
6mの丸太が動く、感動の瞬間だった。
それぞれを信じ、お互いのいきあわせる。
自らに何か突っかかりがあるとき、それが相手への気持ちの表れとなり、お互いの距離が広がり、難しくなる。そこにはなかなかの奥深さがあった。
それはこの運び出しを通して見えた新しい世界だった。
やる前には出来るかどうかも分からなかった難関を皆でことごとく突破し、少しずつひかりが見えてきた。
そうして4月の頭、50本程の丸太を林の奥から道路際まで運び出すことが出来た。
この運び出しを終えた今、また次の段階へと進んでゆく。
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