流れる流木

川岸に横たわっていた流木。
そこに小さな炎が灯り、徐々に大きくなってゆく。
周囲一帯に熱を放ち、香りを漂わせ、音を弾かせながら木はその姿を消してゆく。
森のなかで遠い年月を経て出来た物語は、その体に形となって刻まれる。
それは風であり、陽射しであり、雨であり、雪であり、動物達の生きた姿でもあった。
木はその生涯を自らに刻み付けてゆく、森の中にたたずむ自然界の生きた彫刻。
その命の結晶が炎となってより純粋なエネルギーとなり、目に見えないものとなって周囲にとけてゆく。
それはどこまでも純粋であるから、すべてのもののなかに入ってゆく。
その温もりは肌を通して体の奥深く、体を透して心のなかに静かに浸透してゆく。
それは心になんとも言えない安らぎをもたらし、魂には感動という波が打ち始める。
そこから新たな小さな命が生まれ、徐々に大きな波紋となって広がりながら生命を繋いでゆく。
焚き火に見える流れる命、見えない世界と見える世界とを行き来しながら。


みみをすます

奥会津金山町の山のてっぺんにある宿

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